あいち航空ミュージアム…ゼロ戦を見るなら今のうち?

MRJミュージアムと同じ日に訪れた「あいち航空博物館」の訪問記です。入場料はこの博物館だけだと大人1,000円。正直、現時点の展示内容(特に実機の展示)を考えるとこの金額は高いと私は感じました。MRJミュージアムとセットで購入すると大人1,500円で、これならまあ妥当かなと思います。現時点ではMRJ工場見学の「ウェルカムホール」というのが率直な印象です。

MRJミュージアム以外でもトヨタ博物館や、今年3月24日にリニューアルオープンした岐阜かかみがはら航空宇宙博物館との共通入館券もありますので、何らかのセット割引券を利用して他も訪れることをお勧めします。

前回の記事

ミュージアム公式サイト

冒頭からネガティブなことを書いてしまいましたが、飛行機マニアである私はそれなりに楽しみました。以下、私の見学記録です。

2階のエントランスホール。黒澤明監督デザインのJAS MD-90。中々渋いものを飾ってくれています。

ダ・ヴィンチのヘリコプター

ゲートを通って入館し、最初に展示されているのは500年以上前にレオナルド・ダ・ヴィンチが構想したヘリコプター。

ANAの便名コードが”NH”なのは”Nippon Helicopter”が由来ですね。

これは2012年12月、私がセントレアで撮ったB767″モヒカンジェット”。

名機100選…1/25スケールの模型展示

非常に精巧に作られていて、これはとても見応えがあります。田中祥一さんというモデラーが20年の歳月を掛けてスクラッチ製作した1/25スケールの模型が100機展示されています。

100機の選定は日本航空工学の草分けで日大名誉教授だった木村秀政さんによるものです。

簡潔でポイントを押さえた説明が分かり易いのもGoodです。

ゼロ戦や隼も当然100選に含まれています。

一部の模型は旧名古屋空港に展示されていた古いものも含まれていて、そのためかキャノピーが黄色く退色しているものもありました。しかし、こういった部分はこの模型コレクションの歴史を物語る部分なので私はこのままで良いと思います。

飛燕は復元機がリニューアルオープンした各務原の方に展示されているそうで、次回中部エリアを訪れる機会が有れば見に行くつもりです。

1/25スケールで統一されているので二式大艇のデカさを実感できます。

モヒカンカラーのYS-11。機体やエンジンの金属的な質感が見事に再現されています。

エンジンを機首に搭載しているのが特徴的なH-19救難ヘリ。エンジンや機首のカバーまで精巧に作り込まれていて、ミラーで下部も観察できます。

機首のハッチやドアが開いているC-1輸送機。

日本も開発に参画した767。

767の機内レイアウト。

ここまでが100選の模型展示でした。

このちょっと色褪せたDC-10はJALからの寄贈品っぽいですね。

これは田中祥一さんの製作かは分かりませんが機内も精密に作り込まれています。

787は旅行会社や空港のラウンジに置いてあるような簡易的な模型でした。767などよりも日本が参画したウェイトが高い787を、こんな簡易模型の展示で済ませるのは如何なものかと…

歴史のパネル展示は、内容は分かり易くて良いのですが、文字+写真・イラストだけというのは寂しいですね。所々に画面で各時代の映像や航空会社の昔のCMなども織り交ぜれば単調にならないのにと残念に思いました。

実機展示

YS-11

今のところ、このYS-11と零戦がこの博物館の主役的な展示と言えそうです。

尾翼のマークから分かる通り美保基地に所属していた機体です。

MRJと同様にランディングギアは住友精密製。

アンコリ(衝突防止灯)の形状や、アンテナのケーブルが時代を感じさせます。

通常は機体下には入れませんが、我々はヘルメットを被って機体点検したりフライトシミュレーターで操縦したりする「職業体験」というプログラムに参加したのでこういった部分を観察できました。

零戦の展示

ゼロ戦は「飛行機の工房」と書かれている囲いの中に展示されていました。

囲いの外側には「零戦」とか「ゼロ戦」とかは一切書かれていなくて、最初1階に降りた時は「あれ、ゼロ戦無いじゃん」と思ってしまいましたが、色々と事情が有って『暫定展示』という位置付けで置いているようです。

== 産経WEST 2018.1.10記事からの抜粋引用 ==

しかし、ゼロ戦の展示は順調に進んだわけではなかった。博物館の計画は平成27年5月に県が発表。館内の完成予想図のイメージパースに展示機としてゼロ戦が描かれたことで、県議会では一部議員から「多くの若者が命を落としたゼロ戦の展示は戦争美化につながる」と反対の声が上がった。

地元の前豊山町長も「若い子にそういうものを見せて、興味を持たせたくない。戦争反対です」と抵抗感をあらわにし、ゼロ戦展示は議論の焦点となった。こうした経緯もあり、県は28年12月議会に提出した予算案にYS11など民間機の展示は盛り込んだものの、ゼロ戦は見送った。

しかし、ゼロ戦は県内が当時の一大生産拠点で、世界最高水準を誇った機体でもあり、次代の航空産業の振興を考える航空博物館の展示に「ゼロ戦は欠かせない」という県民の声もあった。

このため県は展示を再検討。三菱重工史料室が29年5月から改装のため休館となったことで「移転展示」するという形とし、YS11などの正式展示とは別にコーナーを設けて暫定的に展示することとした。県担当者は「(ゼロ戦展示は)どうしてもということではないが、地元ゆかりの航空機を考えたときに避ける理由もない」と説明する。

今の時代、ゼロ戦を見て戦争を美化するような単純な青少年が居るとは私には思えませんが…

零式艦上戦闘機は実際に存在し、1万機以上量産された日本の航空機です。平和を尊ぶことは勿論大切ですが、約80年前に初飛行した当時は画期的な性能を持った日本の航空機で、且つ、その時代に日本の工業力で成し得た到達点の一つという技術・産業遺産という観点で見れば良いと私は思います。

余談ですが、ドイツの博物館に行くとメッサーシュミットやフォッケウルフ、ユンカースなどの軍用機も淡々と展示されています。

説明パネル・その1。

パネル右下の拡大です。「コラム」と称して著作から特定の一部だけ抜粋するのも如何かと思いますが、校外学習などの需要を考えるとこういったものも必要なのでしょうね。

説明パネル・その2。

説明パネル右下の拡大です。

赤で囲ったように、いつかは移設されるとあります。

まあ、他の展示機が地味なこの博物館で零戦は貴重な集客コンテンツなので当面はこのまま展示されるものと思いますが。

他が地味だと言ってしまうと身も蓋もありませんが、他の展示機を紹介しておきます。

三菱 MU-2

総生産数762機というヒット作だったプライベート多目的機(色々あって商売としては採算割れに終わりました)。使い勝手も性能も良く、民間や自衛隊だけでなくアメリカ空軍でも採用されたそうです。初飛行は1963年で、YS-11(初飛行は1962年)と同世代の機種です。

この機体は三菱重工の社有機だったものです。

三菱 MU-300

1983年に初飛行したビジネスジェット機。これも機体としては優秀だったものの、時代的な背景や三菱の販売力が弱かったことなどから途中からビーチクラフト社に販売を委託。最後は製造権など一切を譲渡してしまうという三菱としては損切り的な結果に終わりました。

その後はビーチクラフトにも色々あって現在の名前はホーカー400となっていますが、三菱の手を離れてからの販売が好調だったのは皮肉です。

革張りの豪華そうな機内。

三菱 MH2000

エンジン、機体共に三菱製のヘリコプターで初飛行は1996年。2000年には試作機が墜落して機長が亡くなるという事故があり、それもあってか生産数は試作機2機を含め7機のみに終わりました。官需に強い三菱重工を以ってしても自衛隊にも採用してもらえなかったというのは、やはり何らかの問題がある機体だったのかと思ってしまいます。

ミュージアムには2機展示されていて、片方はパネルやカバーを外して内部構造を見れる状態でした。

八〇式名市工フライヤー

名古屋市立工業高等学校の学生達が製作したもので、八〇式という名前はこの高校が2016年に開校80周年を迎えたことと、名古屋市の市章であるマルハチに因んだものだそうです。エンジンはオーストリアのロータックス製503型で、こういった手作り飛行機では定番的に使われるエンジンです。

実機の展示は以上です。

民間機系は商業的に成功しなかったものばかり。また、ゼロ戦は前述の『大人の事情』のため窮屈な囲いの中に押し込まれていて、後半は書いていると気分が沈んできます。純粋に明るい気持ちで紹介できる展示機が高校生が作った八〇式だけというのは寂しいというのが率直な感想です。

その他の展示など

こんな感じで色々並べられています。ただ、「B767コクピットガラス・提供 全日空」「アンテナ・提供 日本航空」「ピトー管・提供 全日空」といったプレートを置いているのみ。例えばガラスなら何層で厚さは何センチとかバードストライク対策についてとか、実例やエピソード等も交えながらの説明が欲しいですね。

B747のメインギア

ストラットの説明は難しいとしても、タイヤやブレーキの説明やカットモデルでも置けばもっと興味を持って見れると思います。

館内のあちこちに元ANAらしきシートが休憩ベンチとして置かれていました。

屋上には展望デッキがあります。

空港ビル側の展望デッキよりも眺望が良いので、天気が良ければスポッティング目当てに来るのもありかなと思いました。

職業体験のプログラムに参加するとシミュレーターでの操縦も楽しめます。

これが結構難しく、先に私がやるのを見た後にトライしたうちの娘(飛行機の知識ゼロ)の方が上手く飛ばしていました…

ミュージアムショップはFun Bladeという名前で、入口にジェットエンジン(恐らくMRJのエンジン)インテイク部を模したものがあります。

館内に展示されているYS-11・空自仕様のぬいぐるみ。

大人買いしたくなるブルーの6機セット。27,000円也。

トイレのマークはパイロットとアテンダント。

ミュージアムが建っているのは元々国際線旅客機も駐機するエプロンエリアだった場所で、そのコンクリート舗装を切り出したものが1階出口にありました。

手に蛍光インクのスタンプを押してもらうと再入場できます。久々の愛知、昼飯はエアポートウォークのスガキヤで玉子入りラーメン(370円!)を食べました。これ、ラーメンとして旨いかは正直微妙ですが何か駄菓子的で懐かしい味なんですよね。

エアポートウォークにて。

セントレア開港前、小牧に国際線が飛んでいた時代を再現したボード。昔はJALの名古屋→ロンドン便が有ったんですね。

見切り発車的にオープンしちゃったのかな…

名機100選の模型展示が素晴らしくて、これだけでも訪れた価値があったと思います。

しかし、例えばカッコいい飛行機の現物を見たい子供が楽しめるかというと今の実機展示だけでは地味過ぎます。展示機は八〇式とYS-11以外は三菱重工製。YS-11も実質的には三菱が中心となって作られたものなので現状は「三菱航空機展示館」です。

三菱に特化するならそれはそれで良いので、超音速機で見栄えのするT-2練習機やF-1戦闘機でも展示すれば子供ウケしそうですが、そうするとゼロ戦展示に批判的な層が黙ってなさそうで…。 その一方、航空技術と軍事・兵器の技術は表裏一体でもあり…

学校の遠足なども貴重な客層な訳で、日本でこういった博物館を運用するのは大変ですな。ミュージアム側の苦労お察しします。

いずれはMRJの試作機もここに展示されるのでしょうけど、それでも集客コンテンツとしては弱いと思います。

例えば、アメリカの砂漠で解体を待つ古い747の機首部分だけでも安く買ってきてコクピットや機内を公開するとか、もっと分かり易いインパクトがあって、且つ、飛行機を身近に感じられる展示が必要と感じました。

色々書きましたがオープンしたばかりのミュージアムです。今後に期待します。

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